USB充電ヘッドホンアンプ (1) スイッチドキャパシタ


調子に乗ってがんがん回路を追加したので呼ぶのが面倒なのだけど、CMoyベースA47式風4chディスクリートGNDバッファ付きのヘッドホンは、とても素晴らしい。L/Rの初段をOPA211、出力GNDバッファをC943/A603のプッシュプル、その他をLT1364にすると、こんな小さなアンプからこんな音がでていいのか、というような音がする。4ch化したマルツMHPA-FET改も、電源がしっかりしているせいか悪くはなく、特にL/RにLT1113、3/4にLT1364あたりを入れると最低域の存在感のような面では長い名前の小さなアンプを上回る。でも、聴いていてエキサイティングで総合的に上なのは小さなアンプ。


小さなアンプにかまけて放置していたPortaphileを久しぶりに聴いてみた。DIPスイッチをすべてONにして、電池の持ちを度外視した音質重視設定で聴いたのだけど、だめだ。市販ポータブルヘッドアンプ中、音質面では最強を誇るはずのPortaphile V2^2が退屈に聴こえる。むーん。


Portaphile、もうこれからあまりかまってやることもないだろうから写真を撮ることにした。



この赤いBlackGateが品薄で、なかなかアンプを出荷できないらしい。



右端が仮想GND用のLT1210。左側がLとRと出力GND用のアンプ、それぞれAD8610+BUF634x2。基板表側のDIPスイッチでBUF634にバイアス電流流したりできる。BlackGate Xといい泣く子も黙るような構成で、これで音が悪いわけ、というかとことん良くないわけ、ないのだが。



LT1210は16PINのSOP。手ハンダでがんばってる。アメリカなんて国でこんなに手間暇かけて、よく200ドル台で売っているなー。



Handmade in USA。昔もっていた、Wadia ProというDAコンバータのトロイダル型の電源トランスには、Proudly Handmade in USA!、というような表記があった。

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小さなアンプ(よし、名前は「小さなアンプ1号」にしよう!)、電源スイッチをオフにすると電池がアンプ回路から切り離されて、外に引き出したターミナルから充電できる、としてあるのだけど、これは大正解で、いちいちネジを外して電池を取り出して、なんてことが必要だったら出力GNDバッファに40mAも50mAも流そうとさえ思わなかったろう。DLGの放電機能付きの急速充電器もあるのでずいぶん楽だけど、ゴロっとした充電器をいつもカバンにいれてるのはちょっと億劫だし、外出していて移動中だとどうにもならないので、結局充電済みの予備の電池も持ち歩くことになりそれも億劫。やはり携帯みたいにPCや外部の電池から充電できるようにしたい。


やってみることにした。充電そのものはあまり凝らず、12Vくらいの電源を用意して、抵抗をかまして数10mA〜100mA程度を流して、7セル満充電の10Vくらいで10mA程度をトリクル充電できるようにしておけばいいのだろう。本当はタイマーをしかけて何時間かで切る、ということをやるべきだけど、なにかいい手があったら考えよう。マイクロ砂時計、というようなデバイスはないものだろうか。あと、気が向いたらツェナーとコンパレータでも仕込んで、電圧に応じてLED付けるとか、10Vになったらなにかするとか、しよう。


問題は、USBバスパワーの5Vからどうやって12Vを作り出すか、ということ。もちろん市販品のDC/DCコンバータなるパーツが各種売られているけれど、この分野は門外漢なのでいったいどういうところを見て選べばいいのかがぜんぜん分からない。原理的にはスイッチドキャパシタで、充電したコンデンサを付けたり繋ぎ換えたり、を高速でやっているのだと思うけど、完結したD/Dコンを買えばいいのか、IC買ってきて組んだ方がいいのか、さっぱりわからない。


数kHzとか以上の周波数の方形波を作って、それでもってコンデンサを繋ぎ換えればいいんだから、とできそうな気がしてきたのでスクラッチビルドしてみることにした。もちろんシリコンを精製したりはせずに、無難にこの辺↓からのスクラッチ



CMOSインバータ、4069UB。


以前、このページを参考に、この4069UBを使って方形波発振器を作ったことがあったので、スイッチング用の発振はそれで行くことにする。あまり高い周波数でスイッチングさせてしまうと、僕のオシロでは見えなくなってしまうのでまずは20kHz。充電するための電源で、直接音楽を鳴らすわけではないから問題ないだろう。



一度作っている回路なので発振させるまでは無問題。1000pFのCと、22kΩのRとで、20kHz強の方形波ができた。


12Vを作るには、電圧の損失がないとして、5Vで充電したコンデンサを3段重ねる必要がある。これで15Vくらいができるはず。いきなり3段は難易度が高いので、まずは2段重ね、10Vを目指して回路図を書いてみた。



使うコンデンサはすべて0.1uFの積層セラミック。USBの5Vのインピーダンスがわからないのだけど、最大500mAのはずだから、単純にそれで計算すると、5V/500mA=10Ω。まあそんなもんだろうか。0.1uFと10Ωだと時定数は0.006ミリ秒、周波数にして約170kHz。スイッチング動作時の0.1uFへの充電時間は20kHzでデューティ比50%、つまり0.025ミリ秒だから時定数の約4倍。これで5Vまでちゃんと充電できるのか、それとも5V電源が暇になって効率が悪いのか、よくわからない。波形をみてから考えることにする。


C1には常に5Vを充電することにする。C2はQ1〜Q4の4つのトランジスタでスイッチングされる。はず。20kHz、50%デューティで充電したりC1の上に重ねたり、となる。つもり。各トランジスタに入る制御信号は次の通り。

  • Q2:Ctrl-0 ... 0V中心の方形波(2Vp-p。以下同じ)
  • Q1,Q4:Ctrl-5i ... 5V中心の方形波、Ctrl-0と逆位相
  • Q3:Ctrl-10 ... 10V(になるべきレベル)中心の方形波、Ctrl-0と同位相


C3は、3段重ねにする際のベースとなる。5V→10V版で、C1やC2の容量が適切かどうかを見るためには、C3は外して負荷をかけて波形を見てみよう。負荷は100mAくらいかな。



上の3種類の制御信号を作り出す回路図(含:方形波発振回路)。
一番下の、1000pFと22kΩとで、1/(2.2x1000pFx22kΩ)=20661Hzとなり、約20kHz。Ctrl-5i用の位相の反転は、4069UBに余っているインバータを使っている。あ、しまった、このままだと振幅が5Vp-pだ。ま、問題ないかな?だめだったら、カップリングコンデンサに入る直前で抵抗分圧すればいいのだな。
あと、ひとつのインバータの出力でいくつものトランジスタを制御しようとしているのだけど、ドライブし切れるものなのかどうかも良く分からない。だめだったらCMOSバッファ買ってくるか、5Vで動くOPアンプを使ってみよう。


動くのか全然だめか、どうなるか。「スイッチドキャパシタ」でぐぐれば立派な回路例がたくさん出てくるに決まってるのだけど、せっかくだからそれは見ずにやってみようと思う。まあ、まだ電池を繋いでいるわけでもなく、間違っていても火は吹かないだろう。動かなくて、どうにも分からなくなってしまったらぐぐる予定。