CMoy (19) LEDとかゲルマニウムトランジスタとか



プッシュプルの2つのトランジスタのベース間に与えるバイアス電圧を、LEDで作ってみよう。光ってきれいだし電圧もだいたい合う感じだし、と思って電子ブロックを作ってみた。上の写真。左側、赤いLEDがが2SC943/2SA603、中央の緑のLEDは2SC1399/2SA726。
右側は最初に作ったC1400/A726で普通のダイオード(1S1588)x3でバイアスを作っているもの。なかなかいい感じで鳴っていたのだけど、試しに電圧を当たってみたら、ダイオードx3の両端電位差よりも2つのトランジスタのエミッタ間の電位差の方が高くなってしまっていて、おかしい。どこか接触しているのか、ダイオードが死んでいるのか。でもどうしてちゃんと音が出るのだろうか。不思議だ。



赤いLEDの電子ブロックをインストールして電源を入れてみた。かっこいい。2SC943/2SA603はIcもPcも余裕があるのでバイアス電流は25mA。結構熱くなる。



緑もかっこいい。こっちは5mAくらい。


これで音がよければ本当に言うことなしだった。わくわくして聴いてみたのだけど、赤も緑も、大きな音のところで寄生発振しているかのようなノイズが乗ってしまう。むーん。プッシュプルのバイアス電圧にLEDを使う作例というのは見たことがなかったのだけど、ちゃんと理由があったらしい。LEDの順方向電圧の電流値への依存性が、普通のダイオードよりも高い、とかそういう話なのだろうか。でも定電圧電源には普通にLEDが登場するし。いつかちゃんと追及してやろう。ツェナーもだめなのかな。



気を取り直して、赤の方、LEDをやめて1S1588x3にしてみた。この出力GNDバッファのソケットは本来2回路入りのOPアンプ用で、基板側の配線は1回路目と2回路目とを全く同じボルテージフォロワとし、10Ωずつを経由して出力が合成される。このソケットの上に1回路のバッファを構成する場合は、入力ピンと出力ピンがOPアンプを入れた場合の回路の違いをまたいでしまっても問題ないので、部品の空中配線の都合で、上の写真では入力は1回路目から取って出力は2回路目に出している。


バイアス電流は、LEDのときよりさらに増えてしまって35mA。2SC943/2SA603の定格Icは200mAだけど、さすがにもともと低めで100ちょっとしかないhFEがだいぶ下がってしまうだろうから、とバイアス回路には少し多めの4mAくらいを流している。残り3ヶ所のOPアンプの消費電流が10mA級だから、これでPortaphileとためをはれる電気食いになっってしまった。



アンプに組み込んで、ノイズ消えているだろうな、と聴いてみて驚いた。ノイズがないどころか、繊細で空気感にあふれて、スケールが大きくて、なんだこれ。かなり信頼しているイヤホンであるとは言えAH-C700なんかで聞いている場合ではない!とATH-ESW10JPNに繋ぎ直した。しばらく聴き惚れてしまった。


このアンプに入れてみて、いい音だなーと思ったOPアンプはLT1364だったりLM4562だったりOPA827やOPA211だったり、といずれも消費電流が大きめ。どれもそれなりにスルーレートなども高速だけれど、消費電流が多い、ということがいい音のOPアンプの一番の共通点なのだろうか。ディスクリートプッシュプルバッファの場合、もちろんバイアス電流が多ければA級動作範囲が広くなってオープンループの歪みが減って、という理屈はあるけれど、電流が多いと音がいい、ということにはその理屈を越えた理由があるような気もする。



で、なるほど、と調子に乗って大消費電流電子ブロックをもう1個作ってみた。今度はゲルマニウムトランジスタNECの2SA204(右側)で、Ic定格は200mA。やけくそで40mA流すことにした。ちなみに左側は愛用している2SC984、20mA。



2SA204をインストールした。光らないけどこれはこれでかっこいい。
音は、もっと繊細感が前面に出たような音がするかと思っていたところ、意外に骨太。バランスは悪くないのでこれは使える。ちゃんと計算してみると、7セルの006P型NiMHが満充電で10Vとすると、エミッタ抵抗が100Ωなのでバイアス電流は50mA。コレクタ損失は50mAx4.5V=225mWとなり、2SA204の定格Pc150mWをオーバーしてる。なむ。図体でかいのになんてこった。まあ、定格越えは金田式もどきサイトの証し(うそ)。



ついでにゲルマニウムをもう1個、手持ちで数の多いサンヨーの2SD72、バイアス電流は30mA弱。緑色のカバーがかわいらしいので期待していたのだが、音は凡庸。残念。これだったら2SC984の方がずっといい。


今日のところのベストは、L/R-1:OPA211、L/R-2:LT1364、CH3/4:LT1364、CH4-Buf:C943/A603(35mA)、かな。



左から順に:

  • 2SC984 20mA
  • 2SA204 45mA
  • 2SC943/2SA603 35mA(+バイアス回路4mA)
  • 2SC1399/2SA726 7mA(+バイアス回路2mA)
  • 2SC2655 20mA
  • 2SC960 20mA
  • 2SD72 30mA
  • 2SC1811 20mA


出力GNDについて、負帰還ループの中に入っているバッファ部分をソケット化しておいて、どんな構成でもレベルがシフトしていてもなんでもかんでもソケットで差し替えて電子ブロック遊びができる、という構成は本当に大正解だった。ブロック1個なら凝って作っても数10分で作れるし、こうやって並べて悦にも入れる。もちろん既製品を差し替えるだけのOPアンプとは違い、シングルA級かプッシュプルか、バイアス電流をどうするか、など楽しく工夫できる余地がたくさんある。トランジスタの種類はOPアンプとは比べ物にならないくらい多いし、ビンテージなゲルマニウムもあるしFETだってある。


DIP8の上にプッシュプルの部品が楽勝で載るわけだから、A級パラレルだって載るだろう。Icが-10mAでPcが80mWのOC44も、パラで使えばなんとかなるかもしれないな。ああでも、高さが入らないか...。面白みは少なそうだけど、とにかくLT1010の電子ブロックは作ってみよう。LT1010x2でもいいか。なんとかできそうだったら、LT1210もやってみよう。