audio-technica ATH-A2000X 制振&吸音改造


ATH-A2000Xの一般的な評価は、側圧緩すぎ、低音出ない、最低域までは伸びているかも、密閉型としては音場広め、で、私もその通りだと思う。両手でチタンカバーを包んで持って顔に押し付けるとかなりいい感じの音になるので、改造することで手を使わなくてもその音が出るようにしたい。既に1.5mmのピアノ線2本を追加して側圧はいい感じになっており、次はユニットの内側の改造。



ピアノ線で強化したA2000X。ちょっとかっこいい。


A2000Xは、パーメンジュールという扱いにくい磁性材料を使った強力ドライバーユニットをマグネシウム一体成型のフレームに取り付ける、という妥協のないハイテク高剛性が売り。普通では聴けない種類の最低域への伸びや、豊富な音場情報の再生能力には、この高剛性構造が効いているんじゃないかと思っている。一方、カタログでは「重さ298g」がうたわれているのだけど、これは、「重さが300gを越えることはまかりならぬ!」というセールス・マーケティング部門の厳命に、エンジニアが泣く泣く必要な制振材や吸音材を外していった結果と思われてならない。


さあ私が必要なものを元に戻してハイテクマグネシウム一体成型の真価を引き出し、エンジニア諸兄の無念をお晴らしいたしましょう、というのが今回の改造の正当化。



ヨドバシカメラで買ってきた材料はこれ。fo.Qというのには黒くてより厚いバージョンもあったけど、今回はとりあえず薄い半透明の方。



パッドがはまっているこげ茶色のフレームこそが、いくつものネジ穴が開けられた複雑な形状のマグネシウム一体成型品で、ドライバー、チタンのカバー、などすべてこのフレームに取り付けられている。ドライバーユニットまわりの不要な共振を抑え、ドライバーユニットが再生する信号を減衰させることなく音に変換するA2000Xの心臓部。


... BEFORE
... AFTER
今回手を入れたのは次の3箇所。

  • ドライバー本体背面に鉛シート貼り付け
  • スポンジの吸音材をフェルトに変更
  • チタンカバー内面にfo.Q制振材を貼り付け

いじって閉じて聴いて開けていじって閉じて...、を何回か繰り返して今のところはこんなところ。


参考にできる事例がないだろうか、とぐぐってみた。A2000Xの改造は見つからなかったけど、Head-fiにFitzさんのATH-W5000改造というのを見つけた。中高音の癖を抑えて低音の量感を増やす、というW5000をAH-D7000風に近づけるような感じでF5000などとも呼ばれている(注:Head-fiではAH-D7000の評価が高い)。これによってaudio-technicaらしい中高音の力強いダイレクトさは減るので、Head-fiでも賛否両論。


F5000の改造ページをみると、ドライバー本体背面に背面中央の穴を塞ぐかたちで制振材を貼っている。最初、これにならって、鉛シートを全面に貼って見た↓
→× これは失敗
どうもこれはA2000Xでは失敗のようで、中高音が妙に突っ張ったラジカセのような音になってしまった。



いまは、ちゃんと中央に穴を開けてある。


ドライバーユニットを、プラ製のリングを介してマグネシウムフレームに固定しているスリットの開いたプラスティックフレーム、これが全然ダンプされずにいたので、鉛シートを細く切って貼り付けてみた↓
→× これも失敗
これも失敗。帯域間のバランスが崩れ、まともじゃない感じ。耳のすぐそばで鳴っているものに手を加えるだけに、ちょっとしたことで大きく音が変わってしまう。このプラ部品は気になるけれど、中途半端な対策打つくらいなら、ドライバーの固定に関わる部分だけ残して切り去ってしまった方がいいのかもしれない。


ATH-W5000では白いフェルト製の吸音材が使われているところ、ATH-A2000Xではスポンジ。これも軽量化のためかもしれないな、と厚手のフェルトに変更してみた。これは大正解で中低域の量感が一気に増し、もともと伸びている最低域のレスポンスとのバランスが取れてきた。もう低音が出ていないなんて言わせないぞ。


ドライバー本体背面の鉛は、どこにどのように効いているのかいまいち分からない。外してもいいかもしれない。チタン内面のfo.Qはお好み次第か。貼らずにおいて中高域に乗る多少の金属的な響きを楽しむのも一興だと思う。


まだこれからも手を入れてしまうかもしれないけれど、現状でも、輝かしさのある高域を武器に、いろいろなジャンルの曲を魅力的に再生できるようになっていると思う。HD650やAH-D7000のような低音の雰囲気感が売りのヘッドホンに比べればまだ低音の量は少なめだけど、それらのヘッドホンでも感じることの難しい最低域の存在感がうれしい。この空気感や超低域の伸びがマグネシウムのおかげかどうかは定かではないのだけど、同じフレーム構造を踏襲していると思われるATH-W1000Xがちょっと楽しみになってきた。近くの量販店に来たら試聴してみよう。