Earphones

最初のマイ・ヘッドホンは、高校1年のときに買ったPioneerのヘッドホンである。


小学生のときの愛用のソノシートのプレーヤーがとうの昔に壊れていた頃、中学1年のときに買ってもらっていたソニーの一番安いカセットレコーダー(韓国製。韓国という国を初めて身近に感じたんだった)で、妹が買ってもらっていたラジカセでエアチェックしたテープを聞くという音楽生活であった。高校に入って、ううう、レコード聞きたい、となんとか頼みこんで家族用に買ってもらってリビングにドーンと据えられたのがビクターのモジュラーステレオ。


ぐぐればでてくるもので、このページの表紙に載っているMK-8という機種だ。うー、かっこいーなー。なつかしーなー。きれいなプラスチックのオレンジ色のパワーボタンが大好きだったことを思い出した。学校で「実はヘッドホンで夜にひとりで音楽を聴くと感動するらしい」という話(へんな話ー)を聞きつけて、今度は頼み込まずに何ヶ月かおこづかい貯めた。自分のおこづかいとは言え「それが本当に欲しいのか?」「買ったら大事に使うか?」など厳重な両親の審議を経てついに買ったのがPioneerのヘッドホン。これもぐぐったらでてきた。機種名はSE-255。このページに載っている。


少ない小遣いで最大の効果を狙ったわけで、選択は極めて現実的。両親の審議に対する説明も必要だったし。で、手元で音量の操作ができる方がいいに決まってる、と、ボリュームが装備されているこの機種に決定。こいつをビクターに繋いで、リビングのソファに横になって、母の「早く寝なさいー!きぃー!」攻撃をかわしながら毎晩1時間ずつくらい、クラシックを聴いていたのがなかなかいい思い出になっている。


大学に進んでPioneerが壊れたあとの2代目マイ・ヘッドホンはSennheiser HD425。学生の身分でずいぶんとはり込んだものだが、パソコン関係のバイトであぶく銭でも入ったのであろう。ぶくぶく。出来心で試聴したところ、あまりの衝撃に買わずにいられなくなってしまったもので、とにかく音がとても気に入っていた。HD425はなかなか頑丈でもあり、社会人になった後もずっと大活躍。火事になったらSennheiser抱えて逃げよう、とか思ってた。

SENNHEISER HD425
さすがに1980年前後の機種で、web上にも写真はほとんどない。イヤパッドは現役の商品として流通しているようなので、本体がeBayに出たら買い直してしまおうかな。軽くて柔らかい風のような、Sennheiserらしさ炸裂の音がする。
その後、魔が差してWadiaとかCelloとかいうヘッドホン端子がないオーディオに走ってしまい、余興でヘッドホンやヘッドホンアンプに手を出していたところ、最近の出張続きに起因する機内音楽や機内映画、そしてiPodの利用頻度急上昇に伴いヘッドホン生活が完全復活した。今度は時流を反映してイヤホン。



Sony MDR-EX700
これは一応発売時からマークしていた。店頭で眺めたりしながら逡巡することも幾回か。機内映画鑑賞のための実用目的でノイズキャンセリングイヤホンMDR-NC22を買って使っていたのだが、実はこれ音悪いんじゃないだろうか、とある日急に気になってEX700をゲット。
NC22は音、悪かった。ノイズキャンセルOFFでもぜんぜん高域伸びていなかったことが判明。EX700は高音伸びる。国産高級オーディオ機器の例に漏れず低音が膨らみ気味で最低域までは伸びていないのは確信犯か。使っているうちに、中高音に雑音が常にからみついているような気配が気になってきた。方式の限界か?と短絡して...、



SHURE SE530
振動板とボイスコイルから構成される普通のスピーカーのミニチュアのような形式のイヤホンとは異なり、SHUREは補聴器用の発声機構を組み込んだモダンな設計のイヤホン。SHUREという僕にとってはカートリッジのメーカーは、今では楽器モニター用や音楽鑑賞用の高級イヤホンのメーカー、というイメージらしい。
直前にここに書いたKlipsch Image X10のような過激な高音質とは異なり、穏当で無難な高音質。高域も低域もX10と比べると物足りないけれど、インピーダンスの対周波数特性の異常さからX10が飛行機内では使いにくいのに比べ、フラットな特性のSE530は途中にアッテネータを入れようがなにしようがびくともしない。最近の飛行機を使う出張時の大事なお供。火事になったらポッケに入れてやろう。
穏当な高音質は、イヤチップの選択をうまくやらないとこもりがちな音にもなってしまう。特に私の場合は純正付属のいわゆる「弾丸(日本)」「Olive(海外)」が鬼門。付属のシリコンゴムはだいぶいいけど飛行機の中では遮音性に難がある。音も遮音性もいいのはER-4Sのいわゆる「黒スポンジ」をすこし短く詰めたもの。



Sony MDR-E888
これは先週の台湾出張時、新竹市の光復路ニ段のNOVAでの捕獲品。1600元。安い。ロングラン製品として有名なイヤホンで、MDR-E484の後継機種として発売開始されたのが1995年。当時ソニーに勤めていたものの自社のオーディオ機器に興味のなかった僕でも、ナタデココのようなバイオセルロース採用のイヤホン、ということは覚えている。先代のE484はさらに思い出深く、ソニーに入社したころの新人研修で、新規導入した3次元メカCADでデザインされた最初の商品、ということで設計者からいろいろ説明を受けた。Sennheiser HD414の音質を目指した、というような売り方もされていたはずで、ソニーも以前はおおらかだったんだ。3次元CADによるセラミックのボディがかっこよく、なんどか買おうと決意するものの果たせず、忘れた頃の20年後の台湾まで持ち越してしまった。
音は、ぼくびっくり。フラットで忠実な再生ではないのだけど、しっかりした低音はEX700よりも楽しめるし、中高音もEX700、SE530、のいずれよりも魅力的。音漏れを気にしなければいろいろできるのだな、きっと。カナル型ではないために、装着状態や左右の耳の形の微妙な差で、ころころと音質が変わってしまうのが最大の問題。昔はこんないい加減な装着のイヤホンしかなかったんだ。なむ。外の音もちゃんと聴こえて安全なので、現在の通勤のお供はこれ。


E888よりも装着が安定していて、EX700よりも丁寧な再生で、SE530よりも開放感があって装着が容易なイヤホンがどこかにないだろうか。オーディオテクニカのCK7とか9とか10なんてのはどうなんだろう、と興味津々な今日この頃。