サンスイ AU-9500の話 (6)

電源の平滑コンデンサを63V/4700uFから63V/10000uFに交換したのは大正解。こんど秋葉でコンデンサ屋に報告しなきゃならん。
残すはドライバー基板と出力パワートランジスタ。面倒そうなドライバー基板のチェンジニアリングにとりかかります。



コンデンサの手前と電源トランスの奥に1枚ずつ縦に刺さってるのが左右のドライバー基板、F-2029。



チェンジニアリング前の状態。


まずはチェンジニアリング方針を決めよう、と回路図↓、

を眺めながら部品の確認をしていたところ、バイアス電圧を与えるVbeマルチプライヤのTr、図面中ではTR821、2SC984という日立製のメタルキャントランジスタが実装されていない、というか、そもそも基板にパターンが存在しないことを発見。


よく図面を見ると、四角い枠で囲ってある。これはF-2029上には実装されていなくて、F-2029からコネクタを通って外に、きっと出力Trのそばでヒートシンクに取り付けられているのだろうな。覚えておいて、出力素子を交換する際には見てみよう。


ドライバー基板上で、入力部の差動を構成するPNP、もともとは2SA726だったのが2SA970になってる部分など、トランジスタは全部交換するとして、やっかいなのは2SC983という平べったいモールドのパッケージが使われている2ヶ所。うち1ヶ所、差動入力段の後のエミッタ接地でプリドライバーに信号を送るTrには、ヒューズが板金で取り付けられていて温度上昇の際に電源供給が絶たれる仕組みになっている。上の基板の写真で、透明チューブがぐるっと伸びているところ、黒い電解Cの上に見える銅色がそれ。ここはこの板金が取り付けられなくてはいけないし、1Wくらいの損失スペックが必要だからといってコレクタむき出しの2SC959とかを持ち出すわけにもいかない。


前回の修理で、もともとの2SC983はパッケージ含めて似たようなスペックの2SC3209に交換されている。↓は外した後の2SC3209。


2SC3209をweb上でぐぐってみると、オーディオ機器に使われている実績はなさそう。2段目のエミッタ接地だからそれなりに音質に定評のあるTrがいいのだけど、どうしよう。後になって調べてみれば、このパッケージだと2SC1811や2SC1940あたりが良さそう。結局ここは、トランジスタのストックをかき回してみつけた2SD756。パッケージの形はちょっと違うけど、結構もってこいかもしれない。そのうち2SC1811か2SC1940に替えてみよう。


次はその2段目の定電流負荷のTr、もともとは2SA706GRで現在は2SB647になってしまってる部分。2SA726Gにしようかと思ったら、かなり電流が流れることを想定しているようなTrの選び方だったので2SA607にしてしまう。定電流源なのだからhFEは高いほうが原理的によいだろう、とKランクを投入。ま、しょせん2SA607なので高いと言っても170くらい。


次、プリドライバー。オリジナルは、金田式DCアンプでも定電圧電源に使われていたソニー製の2SC1124/2SA706で、現状は2SD667/2SB647。手持ちのストックでは、2SC1124はなんとかあるけれど2SA706はない。サンスイラックスマンも、プリドライバーにはCobの小さなTrを選択しているようなのだけど、ま、いいか、と2SC959/2SA606。こないだ台北で買ってきた旧ロットを投入する。


ドライバー。オリジナルは東芝製2SC783/2SA483というあまり聞いたことのないTr。ここは2SC1161/2SA653あるいは2SC1431/2SA762にしたいところで、最近オークションで買ったラックスマンのジャンク、L-309Vをばらせば2SC1161A/2SA653Aが出てくるはず。今回はそこまではせずに、手持ちのTrの中から若松通商でペアで売っていたものを買っていた2SC1161/2SB502Aを使ってみる。


保護回路のTrはオリジナルが2SC735/2SA562、現状が2SC1815/2SA1015。ここは替える必要はきっとないと思うのだけど、せっかくだからメタルキャンの2SC943/2SA603に変更。


他、小さなセラコンはディップドマイカに、前回の修理でエルナー製のシルミックに交換されている入力カップリングCは、OSコンに替えてしまおう。
オフセットとバイアス調整用の半固定も交換しよう、と、回路図を見て5kΩと200kΩのものを買ってきてあったのだけど、現物を当たったら5kΩと300Ω、で断念。うーん。たしかに200kΩってすこしおかしいとは思ったんだ。回路図のミスプリかな。



Trなどを外して、一部マイカCを載せた状態。保護回路のヒューズはうざいので、外してしまおうか、と一瞬思ったけど、とりあえず温存。



チェンジニアリング終了。



Before & After。パターンはいじってないのでパターン面側の写真は意味ないや。



+側ドライバーは2SC1161、プリドライバーは旧ロットと思われる2SC959、左端でぼけているのは2段目定電流負荷の2SA607。



−側ドライバー、2SB502A。金田式的には優先度の低い2SA566代替、らしい。見えてる2SD756は、ヒューズが付いている2段目エミッタ接地と同様、入力の差動段のコレクタ側に接続されているのだけど、働きがよくわからない。もしかしたら、というかたぶん、差動の正負の動作を完全に一致させることを目論んだダミーかもしれない。



−側プリドライバー、2SA606の古いロット。2SC959ともども台北での捕獲品だけど、古い番号のくせに「2S」が省略されていたり、2SA606なのに印刷が黒かったり、もしかしたら怪しい品かもしれない。左側の小さなTrが保護回路の2SA603。


今回は、配線ミスもなく一発でOK。うれしかった勢いで、友人からは禁じ手として戒められているフィルムCパラる作戦を実施してしまった。正負電源の電解Cと帰還回路のDCカット電解Cに、各0.1uFのフィルムCをパターン面側にくっつけた。
これでどんどん勢いがついてしまい、アンプの底カバーを開けてパワー段用電源の直近デカップル、4.7uFの電解Cに0.1uF、ラインアンプ基板の左右電源電解Cにも0.1uFをパラってしまった。内緒なので写真はなし。


バイアス電流とオフセットを調整しなおして聞いてみる。
チェンジニアリングもここまでやれば、プラセボ効果はもう全開で、音はとてもすばらしい。今回のチェンジニアリング後に最初にかけた映画音楽のオムニバス盤では、中低域に妙に膨らむ帯域があるなー、うーむ、とorzな感じになったのだけど、CDを変えたらソースの問題だったことが判明して一安心。


と思っていたら翌朝、左チャンネルから「プツッ」とか「ブツブツ」とかノイズが出ることがあるのを発見。ドライバー基板の左右を交換したら今度は右チェンネルから。オフセットを計ってみると、大丈夫のように見えるけれど、不安定なような気もする。まいったな。片側はOKなのだから、チェンジニアリングした部品をまた全部交換すれば直るのだろうけど面倒だなー。一番あやしいのは台湾渡りの2SC959/2SA606だろうか...。なむなむ。