金属化紙介油侵電容器/サンスイ AU-9500の話 (10)


電容器は繁体字中国語でコンデンサのこと。略して電容とも。コンデンサは日本語韓国語それとヨーロッパの一部で使われている用語でCapacitorのこと。そして、電気関係の英語の文章にcapと出てきたらそれは帽子ではなくコンデンサのことである。


電解コンデンサ繁体字では電解電容器。電解は和製漢語なのだろう。主に明治期に日本で開発された和製漢語はほとんどそのまま漢字圏の外国でも通じるけれど、魚の名前を初めとする和製漢字はぜんぜん通じなくて戸惑うことがある。中国は中国で魚の名前用の漢字の開発をしているので、なんの魚なのかはたいていほとんどわからない。明治期に作られた和製漢字の傑作、鞄、も中国台湾では通じない。


ちなみに電晶体(体は骨豊)、略して電晶、は、トランジスタのこと。台湾の電子部品通販のお店(http://ucccap.myweb.hinet.net/sale.html)などで、瑞士GOLDMUND名機大量採用之電晶体、などと出てくる。


表題の金属化紙介油侵電容器、であるが、英語ではMetarized Paper Oil Capacitorであろうか。表面に金属箔を生成した紙を2枚用意し、オイルに浸して、重ねてくるくると巻いてつくる。真空管アンプなどに使われる高耐圧のオイルコンデンサはどうなっているのだろう。Metaraizedするのではなく、単に金属箔をはさんで巻く構造もあるらしい。


先日、ヤフオクから届いたニッケミのコンデンサ、これはなんて素晴らしい音がする電解コンデンサなのだろう、と感銘を受け、いろいろ情報をググッていたところ、コンデンサパッケージに書かれていたMPはMetaraized Paperの略であることを発見。これ、電解コンデンサではなく、その高音質を噂にだけ聞いていたオイルコンデンサの仲間だったんだ。こんなに歯切れのいい質感の音を出す電解コンデンサは初めてだ、と思っていたのもさもありなん。
金属化紙介油侵電容器。名前もかっこいい。


日曜日、秋葉に出撃。歯切れのいい質感は高耐圧の電解コンデンサのおかげ、と思い込んでいたものだから、AU-9500のラインアンプ基板/ドライバー基板用にニッケミのKMGシリーズの耐圧450Vの小型電解コンデンサを買ってきた。電源デカップルも、カップリングも、みんなKMGの高耐圧品にしてしまおう、という目論見。サイズが大きくなるので容量は保てない。ラインアンプ電源の50V/220uFは450V/100uFに、ドライバー電源の160V/47uFは450V/10uFにそれぞれ容量を減らす。ラインアンプ出力カップリングの50V/47uFは、適当なものがなかったので手持ちのなにかで代用しよう。ここの部分の容量、47uFか4.7uFのどちらが正解なのか、疑問はまだ解けない。



交換後のラインアンプ基板部品面。緑色の薄膜電容器はカップリングで0.47uF。ここはとりあえずこのまま。いくつか見えるOSコンはブートストラップ用などで、今回はここもこのまま。初めてご覧になる方のために自慢すると、右側のメタルキャンTrはラインアンプの出力エミッタフォロワ用の2SA606。オリジナルは2SA726で、購入時の状態では2SA992になっていた場所。



カップリング用のKMG 450V/2.2uF。



出力カップリング用の47uFには手持ちのOSコン。部品面に載らなかったのでパターン面に取り付け。


印加されるDC電圧が低い場合が多いアンプ内部のカップリングCには、耐圧ができるだけ低いものを使うように、とする説がある。コンデンサの自己修復機能は耐圧に近い電圧をかけた方が早く進む、ということが理由らしい。自己修復、というのは、熱などの事故により生じた微小な短絡、つまりDC漏れ、が、使い続けることで短絡箇所が蒸発あるいは融解して解消される、ということだろう。

これはぜんぜん気に入らない説明だ。

そもそも、DCが漏れると音が悪くなるのか?だれかきちんと検証したのか?そりゃカップリングCで派手にDCが流れれば、回路内部の動作点の問題が発生してまともな音が鳴らなくなることはあるだろう。でも、漏れ、と表記される程度のDCで、動作点に影響ない程度のものが本当に音に影響するのだろうか。そういった、音に関係あるのかどうかわからないような問題についての自己修復機能、でコンデンサを選んでいいのか?
じゃ電源はどうだろう?コンデンサでのDC漏れが音に影響するなら、ブリーダー抵抗はどうなるのだ。あれは音質向上のためにあるのではないのか?


同じDC漏れの話で、OSコンはカップリングには使ってはいかん、という説もある。説、というか、開発製造販売元であるサンヨーの資料にも書いてあるらしい。自己修復機能があまり期待できないので、ということらしい。
いずれにしてもDC漏れが音質に影響する、という検証がなされたり、自分で体験したりするまで、低耐圧がよい、OSコンは駄目、という説は無視することにしている。



アンプ底面を開けたので、プリ/ドライバー電源用平滑電解電容器部分に、金属化紙介油侵電容器150V/1uFをパラッてみた。




先日、金属化紙介油侵電容器を取り付けて大幅に音質が向上(自社比。プラセボいっぱい)した出力段電源デカップリング部。上が左チャンネルで下が右チャンネル。



ドライバー基板の電解電容器の交換にとりかかる。購入時の状態では、電源デカップリングにサンヨーの160V/47uFが入っていた。



都合4本、交換終了。



同時に回路の増幅部2段目エミッタ接地の電晶体も交換した。もともと2SC983という電晶体が使われていて、購入時には2SC3209、前回のチェンジニアリングでちょっとパッケージの違う2SD756にしていた部分をNEC製音響用の2SC1941に変更。これは初めて使う石で、メーカー指定コンプリである2SA916(正確には耐圧違いの2SA915?)が、金田式で2SA606の代替に使われたことがあるらしい、という情報を元に選定。



ドライバー基板初段の差動や、プリドライバー/ドライバーはいじっていないのでオフセット、バイアス、ともに調整不要のはずだけど、念のため再調整。片チャンネルあたり150mA流します。


これだけ変えればさすがに音は大幅に変わる。
いい点は、低音にまだ残っていたボコボコ感がほぼ一掃されたこと。
悪い点は、さくさくと歯切れのいい質感が引っ込んで、ずいぶんと滑らかでしなやかな鳴り方になってしまったこと。


自己修復なんてことまでする部品だから、電解電容器にはエージングが必要、と言う。しばらく鳴らして様子を聴くことにしよう。なかなか歯切れのよさが戻らなかったら、ドライバー基板の2段目、2SC1941を2SD756に戻すことからやってみようと思う。