Pioneer DV-600AV (10) Super EIDOS Ver 0.91の誕生


AD8066の後にオープンループでBUF634を追加したVer 0.9で、懸案についての改善には効果がみられなかったので考えた。


本物のEIDOSでは、OPアンプから出て470Ωの出力抵抗やトランジスタによるミュートを経た信号が、リアパネルについているバッファ回路に行って外に出力されている。のだと思う。Super EIDOS Ver 0.9では、OPアンプの出力がすぐにバッファに入り、その出力信号が基板上の出力抵抗やミュート回路を経て外にでる。この、バッファとRCA端子の間の違い、ここに問題があるのかもしれない。


海外のPioneer DVDプレーヤー改造屋の事例では、ミュートをスキップしたり、出力抵抗を置き換えたりしていたケースもあったはず。よし、そうしよう。BUF634の出力を、カップリングCと適当な抵抗を入れてRCA端子に直接引っ張ってもいいし、AD8066の出力を引っ張ったっていい。ロジカルな検証作業であればここはまずOPアンプ出力を引っ張って、となるところだろうけど、いろいろいじりたい、あれもやってみたいこれもやってみたい、という欲求に素直に従うことにした。BUF634の在庫も切れてることだし。


新バッファはこれ。

AD8066の後に、BUF634の替わりにNPNトランジスタのエミフォロが一発。NFBの外なのでバイポーラトランジスタの指数関数的な非線形性が放置になるけれど、気にしない。(まちがい。100%のローカルな負帰還がかかってるわけでから、指数関数の非線形性はでない。と思う。)低音が足りないことが懸案だったから、正側だけとはいえ電源インピーダンスに低域が制約されない純A級出力段は合ってるはず。って、CDプレーヤーの出力にかかる負荷程度であればまあ関係ないか。この回路図、本当はOPアンプとベースの間、そしてエミッタとカップリングCの間、にそれぞれ数10Ωくらいの抵抗があった方がよかったかもしれない。


1cm~2cm角程度の小さな基板であれば、なんとかDV-600AVの基板上の隙間に押し込めそうだったので、トランジスタはできるだけ小さなもの、小さなメタルカンのBC109を使うことにした。こないだ修理したQUAD33に入ってたし、あのアンプはとてもいい音だったし。


RCA端子にどうやって直付けしたものか、と、DV-600AVの基板を眺めてみた。パターンカットしてOK、と簡単には行かなさそう。LとRが上下についてるプラスティックのピンジャックAssyを外して、左右のHot側の足を曲げて基板から浮かせて、などと考えたけれど、あ、そうか、そこまでやるのなら別のピンジャックを付け直してしまえばいいんだ、改造屋だってそうしてたじゃないか、と思い直した。


やってみた。

金メッキは音が悪くなる派、なので、こういうちゃらちゃらした金色部品は本意ではないけれど、手持ちのパーツの中でPioneerのリアパネルの穴にうまく合いそうなのがこれしかなかった。絶縁のプラスティックスペーサーがLRでぶつかったので、ちょっと切って干渉を避けている。もともとのDV-600AVの状態では、LR共通のグランドがネジでシャーシに接続されて導通しているのだけど、なんとなくスペーサーをそのまま使って浮かしてみている。


バッファ子基板を組んでみた。

にょろっとなってる2本のリードが、もともとの基板の出力カップリングCの入り口に入り、信号を小基板に引っ張ってきます。0.68uFのタンタルCは左右のコレクタにつながっていて電源デカップリング、奥の茶色い電解Cは出力カップリング。


小基板を基板に付けてみたところ。

伸びてる赤と黒のリード線は、電源ハーネスのコネクタの足から+12Vとグランドを引く線。金色の線はRCA端子側からグランドを引く線で、ちょっと見える抵抗が、カップリングCから出た信号をプルダウンしている。小基板は金属の足1本で固定。上の、RCAジャックを取り付けた写真に見えるシャーシ底面のネジ穴はタップが切ってあって、基板を留めるためのものなのだけど、このタッピングをなめてしまって、底面側からネジで基板と足をとも締めします。


ようし、今度はBUF634空中配線のVersion 0.9と違って格好もいいぞ、さあ良い音よ、出てくるのである!、と電源を入れたら歪みまくった音がかすかに出たり出なかったりで、異臭もするし、外付け電源のパイロットLEDも消える。なむ。蓋をあけたら煙が漂うし。見てみれば小基板に載せたタンタルCが破裂してる。なむ。
早く音を聴きたいあまり焦ったのか、小基板への+12Vとグランドとを逆に接続してしまっていた。3歩もどる。


噴いたタンタルCを外して、今度は小さな1uFのOSコンにしてみた。


組み上げた。

かっこいい。


音は、微妙。
音の芯、というか密度というか、そういう感触のものがしっかりしてきたことは進歩。オリジナルな状態のDV-600AVの、すかすかした印象はもうすっかり消えた。低音は、かわらず弱い。それに加えて、直前のBUF634版までにはみられなかった、どこか抑えつけられて開放的でないところ、がでてきてしまってとても気になる。空気感のようなものも減退してる気がする。


こういう音は心当たりがある。この前のCDP-XA5ESで、バッファへの電源のデカップリングCをいじったら、頭を抑えつけられたような音になってしまった。あのときは、100uFを220uFにもどしたら音も戻った。DV-600AVでは、外部電源が入ってきたところで220uFでデカップリングしているものの、その後はもともとの基板に載ってる電解C以外では大きな容量のデカップリングはしていない。新しいバッファは、チャンネルあたり常時6V/1kΩで6mA流していて、それなりに負荷も増えているのだから増設してもバチは当たらないだろう。


電解Cというものは、耐圧100Vから200Vのものが一番内部インピーダンスが低い、という説を信じると、手持ちの220uFの中ではKMGの160V耐圧品が一番よさそう。設置する場所を探してなんとか付けてみた。

Super EIDOS Version 0.91、BC109版の誕生である。


後ろから見ると、こう↓だったり、

こう↓だったり。


音は、CDP-XA5ES改のときと同じように、抑えつけられたような雰囲気が消え、空気感もでてきた。低音は、相変わらず。これはもう、本当にメカなのかなー。最初の目論見である、アナログ段からOPアンプを廃してディスクリートのバッファで置き換える、はまだだけど、当面この状態で使ってみようと思う。低音は、そのうちBC109ではなく、2SC959あたりのエミフォロも試してみよう。



KMG160V/220uFの下にこっそり見えているOSコンのようなものはOSコン。+12Vラインに220uFを付けたついでに、+5VラインにもこのOSコン、10V/220uFを付けてしまった。
Super EIDOS計画、とりあえず完了。