Pioneer DV-600AV

スイスのGOLDMUND社がHeavy Modsを施してユニバーサルプレーヤーを作った、そのベースとなったのがPioneerのDVDプレーヤー。その中の中核モデルで、新機種もでて最近は1万円を切る値段で新品を購入できるのがDV-600AV。


Goldmund社によるHeavy Modsは、上の同社のNews Letterによればまず第一にはメカの強化。そして独立電源トランスの追加を含むアナログ出力段の強化。webでの議論、特に日本のwebでは「しんじられないー」から「中身のないハイエンドオーディオの正体見たり」、果ては「悪徳メーカーの代表」というような反応が多い。ずっと放送業界という、ある種浮世離れしたところで仕事をしてきた父と話をするとき、メーカーがものを作る、ということにまつわる原価だとか採算性だとかがからむ話について、メーカーに勤める人間にとってあたりまえのことがそうでない人にとってはまったく意外な話だったのだ、ということはしょっちゅう感じていたので、Goldmund社に対するネガティブな反応はしょうがないのだろうな、と思う。うー、長い文章で読みにくい、涙。


時間のある人は、↑のGoldmund社のサイトにある中身の写真、右側の緑色の基板の右下、ハーネスが基板に入るコネクタをよく見て欲しい。これは、部品挿入ロボットの手先の器用さの進歩の賜物だと思うけれど、コネクタが、基板の縦横の線に対して斜めに実装されていることが分かると思う。
どうして斜めなのか?
この写真はGoldmund EIDOSの中身で、この構造ならばコネクタが斜めになる理由はない。もともとのPioneerのプレーヤーは筐体の奥行きがもっと浅く、緑色の基板はもっとずっとフロントパネルに寄っている。そこにメカからフラットなハーネスが伸びてくるわけだが、そのときに、コネクタが基板の縦横に対して平行に実装されているとすると、コネクタにストレスなくハーネスを差すためには、ハーネスを折り折りするサービス作業が必要になってきてしまう。これは確実に原価アップに繋がってくる。


何が言いたいか、というと、Pioneer(に限らず日本のメーカー)は、こういうこと、量産効果とそれにマッチするこういう細かい工夫を積み重ねて1万円の上等のDVDプレーヤーを作っているわけで、PioneerとGoldmundでどっちの価格設定がおかしいか、と言う話では、Goldmundがおかしい、と単純に言い切れるものではないよー、ということ。
(ちなみにGoldmundが基板を後方にずらしている理由は、リアパネル直近に追加したアナログ最終出力基板への配線の引き回しを短くするためだと思う。)


しっかし十分な説明なしにああいう↑News Letterを出すGoldmund社は、さすがに凄い自信だなー。


僕のDV-600AVは、巷のwebに掲載されているGoldmund社プレーヤーの中身とは違うような気がするけど(一緒でした)、素の状態でも音はそこそこいい感じ。webを漁ったところ、DV-600AVの回路図は出て来なかったけどDV-606Dという機種の回路図は発見。2ch音声出力に関わる主な違いは、DACがDV-606DがPCM1716でDV-600AVがPCM1742、出力OPアンプがDV-606Dが4556でDV-600AVが4580。DACは、いずれも内部にアナログLPFを持つ電圧出力のDAC


DV-606DではDACからの出力が47uFのカップリングを経てOPアンプに入り、-2倍程度のゲインで反転増幅され、47uFのカップリングを経て出力される。反転入力端子が10kΩを経由して220pFでグランドに落ちていて、カットオフが200kHz程度の軽いLPFになっていると思われる。この回路図を参考にDV-600AVの基板パターンを追ってみると、OPアンプではソース抵抗10kΩで帰還抵抗が18kΩの反転増幅、で、ほぼ一緒。



写真はDV-600AVの2chアナログ音声部。2層の基板で、裏面にもチップの抵抗やらコンデンサが実装されている。OPアンプは4580。右上に、実装されていない電解コンのシルクが見えるが、こういうところが7カ所ある。OPアンプとDACの間の2本の電解コンと、OPアンプの下の2本の電解コンがカップリングのC。DACのアナログ電源は5V単電源で、OPアンプは12V単電源だからいずれのカップリングCもOPアンプ側が正になるはずだけど、部品の配置ではDAC-OPアンプ間ではOPアンプ寄りが負になっている。ここの配線は間違いなくOPアンプ側が正になっているのだけど、部品の向きが逆になっているのはマウントするロボットの都合。若干の配線長のロスよりも、コストを重視した設計。ちなみに電解コンはすべてルビコン製。


開けたついでなので、OPアンプを交換し、実装されていないところに10uFの電解コンを入れてみることにした。OPアンプは手元に表面実装のOPA2604があったのでそれ。交換後の音を聴いてみると、なんだか高音が強く、バランス崩れたかもしれない。うー、蛇足だったかも、涙。考えてみれば、Goldmundでも緑色の基板に対してはPioneerのパーツ番号そのままを引用しているのだし、だいたい鉛フリーのハンダだから部品の交換なんてとてもやってられないし、100万円超のEIDOSでも、ここのOPアンプは4580なのだろうなー。今度もどすかもしれない。しかしこの4580、JRCではないっぽい。TI?