ゲルマニウムトランジスタ

というわけで、ぼくは正しいトランジスタおたくを目指している。気が向いたときにオークションで古いトランジスタも落としてもみたり。


今日はその中から3個を紹介。


NEC製2SD11をCDP-XA5ESの自作差動合成バッファの出力エミッタフォロワに入れてみた。

なんと2SD初番のゲルマニウムトランジスタだ。Vcbo=25V、Ic=300mA、Pc=150mW、Tj=85degreeC、hFE=70、ft=2.5MHz。Vcboの低さが怖い。このバッファアンプはレールが+/-14Vなのだけど、GND付近で小さく振れるだけだから問題なし。のはず。ま、耐圧越えは金田式の証(うそ)。
このTrはGe.Aという製法で、Aはアロイかな。薄板の両側に不純物の粒を押し付けて熱して、不純物を染み込ませて作られるらしい。


東芝製2SA76を2段目エミッタ接地に入れてみた。

高周波用の証である4本足を持つゲルマニウムトランジスタだ。Vcbo=-18V、Ic=-5mA、Pc=55mW、Tj=75degreeC、ft=130MHz、Cob=1.7pF。Vcboはさらに危うい。エミッタにもたっぷり抵抗が入っていて、スィングできる電圧範囲がせまくなってるはずだからなんとか大丈夫か。


壊してしまうのが怖くて使ってないムラード製OC44。

全世界のギターファズアンプオタクが泣いて喜ぶと言うムラード製、黒のガラスパッケージのOC44、未使用品。Vcboは上の2SA76と同じくらいのはず。2SA76が飛ばないで動き続けるようだったら起用してみる。


ゲルマニウムトランジスタには、

  • Vbeの正のIc依存性と負の温度依存性が大きい
  • Vcboが小さい
  • Iceoなる漏れ電流が多い
  • 熱に弱い(Tjがシリコントランジスタでは150度とかのところ、85度とか)

というシリコントランジスタとの違いがある。
扱いやすさ、という点ではほとんど1カ所もシリコンに勝るところがないために、今ではたぶん製造されていない。普通の自作オーディオでもほとんど登場しないのだけど、ギターアンプの世界だけは洋の東西を問わず別のようで、ゲルマニウムトランジスタの測定と選別方法などを詳しく解説してくれているサイトもある。


主にVbeにまつわるシリコントランジスタとの違いにより、単純に差し替えて必ず動くわけではないけれど、今回のCDPの自作バッファのように、全段A級動作、全段エミッタ抵抗による局部帰還かかりまくり、オーバーオール負帰還小、という動作点にラフで発振しにくい回路ならば問題なさそうだ。2SA76+2SD11の組み合わせ、今まで標準的に使ってきていた2SA726+2SC960の組み合わせと比べて、ちょっと高音よりに聞こえるけれど、ほとんど遜色のない音がでてきて少し驚いた。いきなり大当たりを引いてしまったのかも。トランジスタの神様ありがとう。