Sony CDP-XA5ESの話 (6.5) 余談

CDP-XA5ESは1994年の発売。定価98,000円。

1992年、CDプレーヤー発売10周年の年に発売されたCDP-777ESJなどが、トレー型の高級CDプレーヤーの最後の機種となる。ソニーは1982年以降毎年高級CDプレーヤーのラインアップを更新してきていたが、777ESJ発売の翌年、1993年は10年ぶりに新機種なし。1年おいて翌1994年に発売されたのが、光学系固定方式のCDP-XA7ESとCDP-XA5ESである。


光学系固定というのは全く新しい方式というわけではなく、ソニーの最初期の業務用CDプレーヤーやRCAの試作レーザーディスクプレーヤー、パイオニアの初期のレーザーディスクプレーヤーなどに実施例がある。


CDP-XA5ESはメカ以外は2年前の555ESJを踏襲している。違いは...

  • DAC/アナログ基板が両面から片面になった
  • FETプッシュプルの出力バッファがなくなった
  • CXA8042が導入された
  • 演算誤差をフィードフォワードするというデジタルフィルターを搭載。なにをやっているのかはよくわからない。ディザも使っているかも
  • 電源トランスがEIコアからRコアになった
  • PCBが片面になったにもかかわらず、ヘッドホンアンプへの給電がハーネスではなくパターンになった
  • ダイレクト選曲キーが復活した
  • シャーシの銅メッキがなくなった


CDP-XA5ESの2年後、1996年に後継機のCDP-XA50ESが発売される。違いは...

  • カタログからSN比の項目が消えた
  • デジタルフィルターの特性がユーザー設定可能になった
  • ダイレクト選曲キーがなくなった


さらに2年後、1998年に、ソニー最後の高級CDプレーヤーであるCDP-XA55ESが発売になる。

  • SN比の項目は消えたまま
  • 出力のDCカットがDCサーボからカップリングCに変更された
  • またデジフィルの石が変わる。DACも変わる
  • 他にも電源トランスが3つ、とかいろいろ


webで評判を見ると、1988年発売の、マルチビットDACが使われた最後の高級機であるCDP-X7ESDと、1998年発売のCDP-XA55ESの評価が高いように見える。その間10年のモデルについては、表現の幅が狭い、だの、声が出てこない変な音、だの言われたい放題。web上の放言だけど、オリジナル状態のCDP-777ESAとCDP-XA5ESにぼくが感じる不満点に通じるところがある。毎年高級機を出していたような頃、ソニーは1年経つごとにSN比が117dBから118dBに上がった、というようなことをやっていた。10年かかったとは言え、気がついてよかった、いやと言うよりは、設計が営業を説得できてよかった、か。


各年代での777の555に対する違いは、バランス出力の追加だったり、ヘッドホンアンプが凝っていたり、電源トランスや電源回路がおおげさになったり、といったところ。金田式風味Mixing/Outputバッファを最初に搭載していたCDP-777ESAは、上で参照したCDP-555ESJの1年前の上位機種だが、CDP-XA5ESに対する違いでここで興味があるのは、デジタルフィルターにディザや演算誤差の特殊処理が導入されている点。あとはメカの違い。