Sony CDP-XA5ESの話 (1)/ちょっと構想中



なかなかハンダごてを握る時間が取れないので、いろいろ構想中。


CDP-777ESAの改造、差動ミックス部および出力バッファ部をディスクリートで組む、次に予定しているCDプレーヤー工作のターゲットは↑。
ソニーは、CDP-101以降しばらく自社製の積分DACを使っていたけれど、途中からフィリップスやバーブラウンのラダー型DACにスイッチ。その後1980年代末期、1ビットDACになって再び自社製DACに戻り、今に至っている。1ビットDACの最初の頃は電圧出力の自社製CXD2552だったりCXD2562Qだったりで、ちょうどその頃のCDP-777ESAやESJはCXD2562Qの2個使い。1ビットDACは低音が出にくいという世評があったらしく、そしてその原因は、1bit DACはマルチビットDACよりも電源をしっかりしないといけないらしい、ということにもなっていたらしい。


1994年発売のCDP-XA5ESは、同時期のCDP-R10やCDP-XA7ESとともに光学系固定型のメカニズムを搭載した最初の民生用CDプレーヤーだが、同時に1ビットDACの低音対策のためと思われるCXA8042SなるアナログLSIが追加されている。従前のCXD2562Qとのコンビネーションで使われ、CXD2562Qの電圧出力をCXA8042Sで電流出力とし、全体として電流出力DACとして動作しているらしい。ソニー言うところのカレントパルスDAC。ちなみにソニーLSIの名称は、CXDはデジタル信号処理用、CXAはアナログ信号処理用、であると思う。


上の回路図の左端、IO1+/-、IO2+/-というのはCXA8042Sの電流出力端子である。CDP-XA5ESでは三菱のM5238というJ-FET入力段のOPアンプと270Ωの抵抗でIV変換を行い、AD712で差動信号を合成、さらにAD712がLPF兼出力バッファとして動作している。実際の回路ではOP27が使われたDCサーボがかかっているのだけど描くのを省略。電源は+/-12Vで、定電圧源としてFET定電流に駆動されたツェナーが使われた、OPアンプとパワートランジスタによる定電圧電源。


倍以上の価格で発売されたCDP-XA7ESには、サファイアのモーター軸受け、ディスクリート回路による出力バッファとヘッドホン出力、バランス出力、といった高原価&カタログ上高訴求力装備が満載されている。ま、きっと強化されているであろう電源トランスと、サファイア以外は全部いらない、かな。11月8日の日記で書いた価格パラメータが逆方向に働くとこうなってしまうのだな。どっちの方向でも使えない。XA5ES...8042S、XA7ES...8042AS、という話もあるみたいなのだけど、どんな違いがあるのだろう(訂正:CDP-XA5ESの現物確認の結果、CXA8042ASでした。2008.7.14追記)。


カレントパルスDAC、つまりCXA8042Sの追加は、もしかしたら低音は出るようになっているのかも知れないけれど、OPアンプによるIV変換ステージが必要になるなど回路が複雑化することもあり、トータルで本当に音質の向上(もちろん僕の主観だけど)に役立っているのか、は疑問に感じる。実際、オクで安く買えたCDP-101の超美品と聴き比べると、弱音部への魂の入り具合において、比較にならないくらいCDP-XA5ESはへたれている。DACの構成もLPFの回路も違うCDP-777ESAのへたれ方と同じような印象であるところなど、作る側はこれでよし、として調整した感もあり、その調整基準と僕の主観基準とに差がある、ということなのだろう。ことなのだろう、としておくのが大人の日記というものだけど、CDP-XE700などという単純な回路の廉価機種が、ソニーCDプレーヤーの中で最高音質、などと流布されていることを、ちょっとまじめに反省してみてもいいのでは、とはもちろん思う。


さて...、自作DACの記事を見ると、IV変換をどう処理するかは回路検討の大きな主題のひとつになっていて、抵抗器1本から、サトリアンプまでいろいろあるらしい。マランツなどでは自社製の差動アンプモジュールと思われるHDAMというモジュールを使ったりもしている。今回CDP-777ESA用に作っているバッファも差動アンプモジュールだけど、入力段がバイポーラだからIV変換用には向かないのだろうな。FETの勉強はもう少しバイポーラを使いこなしてから、とお預けにしてあるし。むーん。


上の回路図を眺めてまず思ったのは、細かいCやRがいっぱいあるなー、ということ。CDP-777ESA用のディスクリートバッファの検討中は、方形波で発振を見ながらオープンループゲインを下げて負帰還量を減らしていったのだけど、がんがんCやRを外しても大丈夫で、どんどん音が生き生きとしてきたものなー。とりあえずIV変換はOPアンプで、まあM5238は辞めてAD8620あたりに替えるとして、2段目の差動合成はディスクリート回路に、最後のLPF段は外してしまう、といったあたりが最初の一歩だろうか。いや最初の一歩は、IVとMixのOPアンプを替えて細かいCを外し、LPFはスキップして音出ししてみるところかな。ああ、DCサーボも外してカップリングCに変更しよう。


なにはともあれ、まずはCDP-777ESA。